ニューヨーク連邦準備銀行(NY連銀)のエコノミストが公表した論文で、米国が導入した関税が2026年2月までにモノ(財)の物価を2.9ポイント分押し上げたとの試算が示されました。関税がなければ財の価格はむしろ小幅に下がっていたはずだとされ、身近な商品の値上がりの多くが関税に起因すると指摘しています。インフレの「犯人」をめぐる議論が、改めて熱を帯びています。
2.9ポイントとはどれほどか
論文はメアリー・アミティ氏、セバスチャン・ハイゼ氏、デビッド・ワインスタイン氏の3氏によるもので、関税率が1ポイント上がるごとに、その約4分の1が1年以内に消費者物価へ転嫁されると試算しています。これを積み上げると、2026年2月時点で財の物価は関税によって2.9ポイント分高くなった計算になります。衣類や家具、家電など輸入に頼る品目ほど影響が大きいとみられます。
ホワイトハウスは猛反発
この論文に対し、ホワイトハウスのケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長は、執筆したエコノミストらは「規律」されるべきだと述べ、「これまで見た中で最悪の論文だ」と酷評しました。政権の経済政策と中央銀行系の調査との間で、インフレ統計の解釈をめぐる緊張が表面化した形です。
金利の行方を左右する
米連邦準備制度(FRB、米国の中央銀行にあたる)は、関税による値上がりが一時的なものか、持続的なインフレにつながるのかを慎重に見極めています。関税が財の価格を押し上げ続ければ、利下げの余地は狭まります。実際、9月のFRB会合の議事要旨では追加利上げを見込む声も示されており、高金利が長引くとの観測が市場で強まっています。
日本への影響
この問題は日本にとって対岸の火事ではありません。米国の関税がインフレを長引かせれば、FRBは金利を高水準で維持せざるを得ず、日米の金利差が開いた状態が続きます。金利差の拡大は円安ドル高を招きやすく、輸入物価の上昇を通じて日本の家計にも間接的な負担が及びます。トヨタ自動車やホンダなど米国市場に依存する輸出企業にとっては、関税そのものがコスト増と価格競争力の低下につながる懸念があります。一方で円安は輸出企業の採算を改善させる面もあり、影響は一方向ではありません。個人投資家にとっては、米国のインフレ指標やFRB高官の発言が日経平均株価や為替を大きく動かす場面が増えると見込まれるため、主要な経済指標の発表日程を意識しておくことが求められます。米国で値上がりした輸入品の価格が巡り巡って日本の店頭にも波及する可能性があり、家計を守るうえでも価格の動きに目を配っておきたいところです。
まとめ:関税という政策判断が、めぐりめぐって私たちの財布にも届きます。数字の裏にある政治の綱引きにも、冷静に目を向けていきたいですね。
出典:
CNBC – Inflation on many everyday items was entirely due to tariffs, NY Fed says
24/7 Wall St. – New York Fed finds tariffs added 2.9 points to goods inflation by February 2026
AOL/Reuters – Kevin Hassett says Fed economists should be ‘disciplined’ over tariff study


