中国・美団が1.6兆パラメータのAIを公開──「国産チップだけで訓練」と主張

テクノロジー

中国のフードデリバリー大手・美団(メイトゥアン)が、1兆6000億パラメータという巨大なAIモデル「LongCat-2.0(ロングキャット2.0)」をオープンソースで公開した。最大の特徴は、5万枚規模の中国国産AIチップだけで訓練から推論までをすべて完結させたと主張している点だ。米国の半導体規制が続くなか、中国のAI開発が独自路線で存在感を高めていることを示す出来事として、世界の関心を集めている。

巨大だが効率的な「混合エキスパート」

パラメータとは、AIモデルの性能を左右する内部の変数の数で、多いほど複雑な処理が可能とされる。LongCat-2.0は、必要な部分だけを選んで動かす「混合エキスパート(MoE)」という仕組みを採用し、総パラメータ1.6兆のうち、実際に稼働するのは330億~560億にとどまる。これにより巨大なモデルでありながら効率的な運用を実現していると説明されている。

国産チップでの訓練を強調

注目されるのは訓練環境だ。美団は、LongCat-2.0を「業界で初めて、5万枚の国産演算チップからなるクラスターで訓練と推論の全工程を完結させた1兆パラメータ級モデル」だと主張した。中国の華為技術(ファーウェイ)の通信ライブラリが使われたとされ、実際にはファーウェイ製チップが関与している可能性が指摘されている。

性能面では、プログラミング能力を測る指標「SWE-bench Pro」で59.5を記録し、米オープンAIのGPT-5.5の58.6を上回ったとしている。ただしこれは美団による自己申告の数値で、第三者による独立した検証は行われていない。モデルは商用利用が可能なMITライセンスで公開されたが、完全な重みデータ(学習結果)はまだ公開されていない点にも留意が必要だ。

日本への影響

中国が米国製の先端半導体に頼らず巨大AIを訓練できたと主張したことは、日本の半導体・AI関連企業にとって見過ごせない動きです。米国の対中輸出規制が続くなかでも中国が独自にAI開発を進められるとすれば、エヌビディア製GPUを中心とする現在の供給構造に長期的な変化をもたらす可能性があり、東京エレクトロンやアドバンテストなど装置メーカーの中国向けビジネスの先行きにも影響が及ぶと見込まれます。

同時に、高性能なAIモデルがオープンソースで無償公開される流れは、日本の企業やスタートアップにとって好機ともなります。自社で巨額の開発費をかけずに先端AIを業務に取り込める余地が広がるためです。一方で、生成AIの主導権をめぐる米中の競争が激しさを増すなか、日本としては特定国の技術に過度に依存しないよう、国産の計算基盤やモデル開発をどう育てるかという課題にも向き合う必要があります。

まとめ:AIの覇権争いが「半導体の自給」という新たな局面に入ったいま、その行方を注意深く見守っていきたいものです。


出典:
VentureBeat – Meituan open sources LongCat-2.0
SCMP – China claims biggest AI model trained on local chips
SiliconANGLE – Meituan open-sources LongCat-2.0

Photo: Brecht Corbeel / Unsplash

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