韓国が、半導体とAI(人工知能)で世界の覇権を握るため、国家を挙げた巨額投資に乗り出す。李在明(イ・ジェミョン)大統領は6月29日、総額800兆ウォン(約5180億ドル)規模の半導体エコシステム構築計画を発表した。世界最大手のメモリーメーカーであるサムスン電子とSKハイニックスが、それぞれ新工場2棟ずつを国内に建設する。
南西部に4棟の新工場
今回の計画は、韓国南西部に新たな半導体生産拠点を築く構想が柱となる。サムスン電子とSKハイニックスが取引先企業とともに、合わせて4棟の新しい工場(ファブ)を建設し、AI時代に急増するメモリー需要に対応する。李大統領はこれを「大きな飛躍」と位置づけ、半導体・フィジカルAI(実世界で動くAI)・データセンターという「三つの軸」を据えた。
投資の規模は半導体工場にとどまらない。韓国政府は、AI向けデータセンターに2029年までに550兆ウォン、2035年までには1000兆ウォンを超える資金を投じる方針を掲げている。米国や台湾、中国との技術競争が激しさを増すなか、国家資本を大量に投入して「圧倒的な産業リーダーシップ」を確立する狙いがある。
市場は供給過剰を警戒
もっとも、市場の反応は冷ややかだった。発表のあった月曜日、サムスン電子の株価は4.86%、SKハイニックスは1.68%それぞれ下落した。投資の急拡大が将来の供給過剰(半導体が市場にあふれて価格が下がる状態)を招くとの懸念が一部のアナリストから出ている。野党側からは、南西部への集中投資が政治的な思惑によるものではないかとの批判も上がっている。
日本への影響
韓国の半導体大増産は、日本の関連産業にとって追い風と逆風の両面を持ちます。サムスンやSKハイニックスが新工場を一気に立ち上げれば、製造装置や素材の需要が膨らみ、東京エレクトロンやアドバンテスト、信越化学工業、JSRといった日本の半導体装置・材料メーカーにとっては大きな受注機会となります。日本企業は前工程の装置や高純度材料で高いシェアを握っており、韓国の設備投資はそのまま日本の輸出拡大につながりやすい構図です。
一方で、メモリー分野で供給過剰が現実になれば、DRAMやNAND型フラッシュの価格が下落し、キオクシアをはじめとする日本勢の収益を圧迫する恐れもあります。AI半導体をめぐる国家間の競争が激化するなかで、日本政府もラピダスなどへの支援を進めており、官民の投資競争はいっそう熱を帯びそうです。日本の投資家としては、半導体関連株が韓国の動向に敏感に反応しやすい点を意識しておくことが求められます。
まとめ:韓国の国家ぐるみの半導体投資は、日本の装置・材料メーカーに商機をもたらす一方で価格競争の火種にもなりかねないだけに、その行方を注意深く見守っておきたいところではないでしょうか。
出典:
CNBC – Samsung and SK Hynix investing in AI, semiconductor mega-projects
Al Jazeera – South Korea announces AI, chip investment drive
CNN Business – South Korea to invest in AI chip production
Photo: Google DeepMind / Unsplash

