米AI大手アンスロピックが、株式市場への上場(IPO)で最大2兆ドル(約300兆円)の企業価値を目指していることが分かりました。ロイター通信などが9月29日、流出した目論見書(もくろみしょ)の草案をもとに報じました。急成長の一方で巨額の赤字を抱える実態も明らかになり、投資家の間で評価が割れています。
売上46億ドル、赤字420億ドル
報道によると、目論見書の草案ではアンスロピックの2025年の売上高は約46億ドル(約6900億円)とされ、前年から大きく伸びました。一方で、同年に関連する損失は約420億ドル(約6兆3000億円)にのぼると報じられています。売上を大きく上回る赤字は、AIの開発に必要な計算資源(コンピューティング)への巨額投資が主な要因とみられます。
計算資源に78兆円の支払い義務
特に注目されるのが、将来のコンピューティング利用に関する契約額です。草案では、今後の計算資源の確保に向けて約5180億ドル(約78兆円)もの支払い義務を負っているとされます。AIモデルの学習には膨大な計算能力が必要で、その大半をデータセンター事業者との長期契約でまかなう構図が浮かび上がります。目指す時価総額2兆ドルは、実現すれば米国を代表する巨大企業に匹敵する規模です。
急成長と先行投資の「二つの顔」
アンスロピックは対話型AI「クロード(Claude)」を手がける企業で、生成AIブームの中核的な存在の一つです。今回の目論見書は、AI企業が急拡大する売上と、それを上回る先行投資という「二つの顔」を併せ持つことを改めて浮き彫りにしました。巨額赤字を成長への投資とみるか、持続性への懸念とみるかで、上場後の株価評価は大きく分かれそうです。
日本への影響
アンスロピックの大型上場観測は、日本の投資家にとっても見逃せないテーマです。まず、同社にはアマゾンやグーグルといった巨大企業が出資しており、上場が実現すればAI関連銘柄への資金流入がさらに勢いづく可能性があります。日本国内でも、AI向け半導体やデータセンター、電力インフラに関連する企業への物色が強まることが予想されます。ソフトバンクグループのようにAI分野への投資を積極化する企業にとっては、市場全体のAI評価が高まることは追い風となり得ます。一方で、売上を大きく上回る赤字という構図は、AIブームが「期待先行」で膨らんでいる面があることも示しています。仮に米国のAI関連株が過熱の反動で調整局面に入れば、日経平均に採用されるAI関連の日本株も連動して値動きが荒くなる恐れがあります。日本の個人投資家としては、話題性だけで飛びつくのではなく、企業が赤字をどのように収益へ転換していく計画なのかを冷静に見極める姿勢が求められます。
まとめ:桁外れの売上と、それを上回る桁外れの赤字。AI時代の企業評価の難しさを象徴する上場劇を、注意深く見守っていきたいですね。
出典:
Reuters/Yahoo – Anthropic prospectus shows $2 trln IPO ambition
The Motley Fool – Anthropic revenue and losses
Fortune – Anthropic IPO prospectus income statement
Photo: TabTrader.com / Unsplash


