半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、回路線幅1.6ナノメートル(nm、10億分の1メートル)に相当する次世代技術「A16」の量産を、2026年10〜12月期に始める見通しです。最先端をめぐり、米インテルとの競争が年内に本格化します。
2026年第4四半期に量産開始へ
TSMCの「A16」は、微細化の目安となる回路線幅で1.6nm級に位置づけられる最先端プロセスです。同社は2026年第4四半期(10〜12月)に量産を開始する計画を示しており、AI(人工知能)向けの高性能半導体を必要とする顧客が、最初の採用企業になるとみられます。
裏面から電力を供給する新技術
A16の最大の特徴は、「スーパー・パワー・レール」と呼ばれる裏面電力供給(バックサイド・パワー・デリバリー)技術を採用した点です。これはチップの裏側から電力を供給する仕組みで、表側の配線の混雑を緩和し、電圧供給を改善するとともに、信号用の配線に使える領域を増やせます。従来の2nmプロセスと比べ、同じ電力なら約10%の高速化、同じ性能なら約20%の省電力化が見込めるとされます。
インテルとの最先端争いが本格化
この分野では、米インテルが1.8nm級の「18A」プロセスを先に量産に投入し、「プロセス技術の主導権」奪還を狙っています。インテルは裏面電力供給の実用化で先行しましたが、TSMCのA16はより洗練され、効率の高い実装だと業界では受け止められています。1.6nmと1.8nmという最先端をめぐり、両社の競争は年内に一段と激しくなる見通しです。A16が狙う主戦場は、AIアクセラレーターや高性能計算(HPC)といった、電力密度や動作周波数、チップ面積の効率が厳しく問われる用途です。生成AIの普及でデータセンター向け半導体の需要が急拡大するなか、どちらの技術がより多くの顧客を獲得できるかが、今後の半導体勢力図を左右します。
日本への影響
TSMCとインテルの最先端競争は、日本の半導体産業にとって大きな意味を持ちます。TSMCは熊本県に工場を展開し、日本国内での生産体制を強化してきました。A16のような最先端プロセスの量産が進めば、その前工程・後工程を支える日本の半導体製造装置メーカーや材料メーカーにとって新たな商機となります。東京エレクトロンやアドバンテスト、信越化学工業、SUMCOといった企業は、微細化の進展から恩恵を受ける代表的な銘柄であり、こうした技術動向は株価にも影響します。
家計や個人にとっても、この競争は身近な製品につながっています。1.6nm級の高性能・省電力チップが実用化されれば、スマートフォンやパソコン、データセンターの電力効率が向上し、AI機能を搭載した製品がより手頃な価格で普及する可能性があります。日本政府が半導体を経済安全保障の要と位置づけ、多額の補助金で国内生産を後押ししている今、最先端技術の行方は国の産業戦略とも深く結びついています。投資家にとっては、半導体関連株が中長期のテーマであり続けることを示す材料といえます。
まとめ:1.6nmと1.8nmの最先端争いが年内に本格化します。日本の装置・材料メーカーへの波及も見据えて動向を追っていきましょう。
出典:
SemiWiki – TSMC eyes A16 mass production in 4Q26 and Intel refines 18A roadmap
Wccftech – TSMC’s A16 ‘1.6nm’ Node Promises 10% Speed Boost or 20% Power Cut Over 2nm
Interesting Engineering – TSMC unveils new A16 tech for 1.6nm chips as AI race heats up
Photo: Brecht Corbeel / Unsplash


