米グーグルが、AI用の半導体を宇宙で動かす「プロジェクト・サンキャッチャー」の試験衛星を、10月1日にスペースXのロケットで打ち上げると明らかにしました。宇宙の豊富な太陽光を使い、地上より安く大量の計算をこなす「軌道上データセンター」の実現をめざす、野心的な一歩です。
冷蔵庫大の試験衛星「MVP」を打ち上げ
グーグルが打ち上げるのは、冷蔵庫ほどの大きさの試験衛星「MVP」です。10月1日にスペースXのファルコン9ロケットで低軌道へ運ばれる予定で、衛星本体は地球観測企業のプラネット・ラブスが製造し、搭載するAIチップ「TPU(テンソル処理装置)」はグーグルが設計しました。TPUとは、AIの学習や推論に特化したグーグル独自の半導体です。
4基のTPUを搭載、宇宙での動作を検証
この試験衛星には4基のTPUが積まれ、太陽電池パネルが約1キロワットの電力を生み出します。狙いは、宇宙という過酷な環境でTPUが正常に動くかを確かめることにあります。打ち上げ時には地球の重力の約10倍の振動がかかり、軌道上では宇宙放射線にさらされます。冷却の制約から、チップはいまのところ15分ほどの短時間しか連続稼働できないという課題も残っています。
グーグルは2025年11月にこの構想を発表しており、スペースXが掲げる宇宙データセンター計画への対抗という側面もあります。同社は2027年にさらに2基の衛星を打ち上げ、衛星間を結ぶ高速レーザー通信を試し、将来の「衛星群(コンステレーション)」による本格的な軌道上計算網の構築をめざします。
日本への影響
AIの計算を宇宙で行うという発想は、日本の宇宙産業やハイテク企業にとって新たな市場の芽となります。地上のデータセンターは膨大な電力と冷却水を必要とし、日本でも電力需給の逼迫や立地の制約が課題となってきました。宇宙で太陽光を使って計算する仕組みが実用化されれば、こうした地上の制約を回避する選択肢が生まれ、三菱電機やNEC、スカパーJSATなど衛星開発に強みを持つ日本企業に協業や部品供給の機会が広がる可能性があります。半導体分野でも、宇宙の放射線に耐える「耐放射線チップ」の需要が高まれば、ルネサスエレクトロニクスなどの日本メーカーに恩恿が及ぶことも考えられます。投資の面では、米国のハイテク株を組み入れた投資信託を持つ個人にとって、グーグルの長期的な技術戦略は同社株の評価を左右する要素です。日本の読者としては、AIの舞台が地上から宇宙へと広がりつつある変化を、遠い話と片づけず、関連する国内企業の動きとあわせて見守る姿勢が求められます。
まとめ:AIの計算工場が、いよいよ宇宙をめざし始めました。実現にはまだ多くの壁がありますが、技術の地平が広がる瞬間として、その一歩を楽しみに見守っていきたいですね。
出典:
SiliconANGLE – Google’s first Project Suncatcher AI satellite set to launch
Taipei Times – Google plans test of space chips in Project Suncatcher
Photo: NASA Hubble Space Telescope / Unsplash


