トランプ米大統領が10月16日、議会が可決したロシアへの新たな制裁措置を、発動直前に大統領権限で凍結(適用免除)しました。「国益にかなう」と説明していますが、ウクライナのゼレンスキー大統領や米議会の与野党から反発が噴き出し、米ロ関係をめぐる駆け引きが新たな局面に入っています。
発動前に止まった制裁
凍結されたのは、9月に成立した「リンゼー・グラハム・ロシア・イラン制裁法」に基づく措置です。亡くなった故リンゼー・グラハム上院議員にちなんで名付けられたこの法律は、ロシア政府・軍の高官や主要銀行、制裁逃れに使われる「影の船団」と呼ばれるタンカー群を対象とし、ロシア産品やロシア産原油・ガスを買い続ける国にも追加関税を科す内容でした。トランプ氏はこれらの発動を見送る大統領令に署名しました。
ロシアは歓迎、ウクライナは反発
ロシアのドミトリエフ大統領特使は、この決定を「極めて重要で歴史的な瞬間」と歓迎しました。これに対し、ブリュッセルを訪れていたゼレンスキー大統領は、トランプ氏が別途進める米ロ間のディーゼル燃料供給の取り決めを拒むと表明し、「次はガスの取引が来る」と警戒感をあらわにしました。制裁が銀行や個人、化学産業にまで及ぶ可能性にも言及しています。
米議会でも割れる評価
制裁法は米議会で超党派の支持を得て成立しただけに、発動前の凍結には与野党双方から反発の声が上がっています。トランプ氏は10月に入り、ロシアが世界市場にディーゼルを供給する取り決めも打ち出しており、燃料価格の引き下げと引き換えに制裁を緩める「取引外交」の色合いが強まっています。和平交渉の行方とも絡み、今後の展開は予断を許しません。
日本への影響
日本は主要7カ国(G7)の一員として対ロシア制裁の足並みをそろえてきただけに、米国が独自に制裁を緩める動きは、国際的な制裁体制の結束に揺らぎを生じさせます。とりわけ、ロシア産原油・ガスを買う国への追加関税が見送られたことは、エネルギー市場の需給観に影響します。ロシア産燃料の供給が増えるとの観測が広がれば、足元で110ドルまで高騰した原油価格を下押しする要因となり得ますが、同時に制裁の実効性が薄れれば地政学リスクが長引く懸念もあります。資源の多くを輸入に頼る日本にとって、エネルギー価格の方向感は貿易収支や電気料金に直結します。政府・企業は、米国の対ロ政策の転換が供給網や為替に及ぼす波及を、慎重に見極めることが求められます。
まとめ:制裁をめぐる米国の方針転換は、遠い外交の話にとどまりません。エネルギー価格を通じて、私たちの暮らしともつながっています。
出典:
https://www.euronews.com/2026/10/17/trump-signs-executive-order-waiving-new-russia-sanctions-package
https://www.washingtonpost.com/politics/2026/10/17/trump-signs-executive-order-waiving-sanctions-against-russia/
https://www.cnbc.com/2026/10/17/trump-waives-russia-related-sanctions-tariffs-before-they-take-effect-.html
Photo: Jayde Keroi / Unsplash


