米オープンAIが8月5日、アップルから起こされた企業秘密(トレードシークレット)侵害訴訟の却下を求める申し立てを裁判所に提出しました。オープンAIは訴えを「根拠がない」と一蹴し、アップルの秘密情報を「使う必要も欲しいと思う理由もない」と真っ向から反論しています。人材の引き抜きと機密流出をめぐる米テック大手同士の法廷闘争が本格化してきました。
発端はアップルの提訴
発端は7月にアップルが起こした訴訟です。アップルは、オープンAIが元従業員や採用活動、取引先との関係を通じて自社の機密情報を組織的に入手し、消費者向けハードウェア開発を加速させたと主張しました。アップルによれば、400人を超える元スタッフが関与したとされる大規模な人材引き抜きと知的財産(IP)の侵害があったといいます。
オープンAIの反論
これに対しオープンAIは、31ページに及ぶ申し立て書のなかで「オープンAIはアップルの企業秘密を使う必要も、欲しいと思う理由もない。我々はアップルにあるものとはまったく異なる、新しいものを作っている」と主張しました。そのうえで、アップルが企業秘密として主張する情報の内容を十分に特定できておらず、保護対象となる秘密を保有していることや、被告らによる不正取得を説得力をもって示せていないと指摘しています。
さらにオープンAIは、アップル側の情報管理体制にも切り込みました。アップルが従業員の個人用iMessageを会社支給端末上で確認していたことや、業務に個人のiCloudアカウントを使うよう社員に指示していたことを挙げ、私的なデータと会社のデータが混在する状況をアップル自身が招いたと反論しています。
今後の法廷スケジュール
今後の法廷スケジュールも固まっています。アップルは8月19日までに反論書を提出し、審理は10月1日にカリフォルニア州サンノゼの連邦地方裁判所で開かれる予定です。ChatGPTを手がけるオープンAIが独自の消費者向けデバイス開発に乗り出すなか、両社の対立は今後さらに激しさを増す可能性があります。
日本への影響
この訴訟は米国企業同士の争いですが、日本のテクノロジー業界や消費者にも無関係ではありません。オープンAIが独自のAI搭載デバイス開発を進めていることは、スマートフォン市場でiPhoneに強く依存する日本市場の勢力図を将来的に塗り替える可能性を秘めています。ソフトバンクグループはオープンAIへの大型出資で知られ、同社の事業リスクや評価額の変動は、日本の投資家にとって直接の関心事だと言えます。
また、優秀な人材の引き抜きや企業秘密の管理をめぐる争いは、AI開発競争が世界的に過熱するなかで日本企業も直面しうる課題です。ソニーグループや楽天グループなどがAI人材の確保にしのぎを削るなか、機密情報の管理体制や退職者との契約のあり方を見直す動きが広がるとみられます。日本企業がグローバルなAI競争で戦ううえで、知的財産をどう守るかという視点がこれまで以上に重要になります。
まとめ:AI開発競争の激化は、人材と機密をめぐる法廷闘争という新たな局面に入りました。技術だけでなく知財戦略の行方にも注目していきましょう。
出典:
Axios – OpenAI files motion to dismiss Apple trade secrets lawsuit
Quartz – OpenAI asked a judge to throw out Apple’s trade secrets lawsuit
Bloomberg – OpenAI Asks Judge to Toss Apple’s Trade Secrets Lawsuit
Photo: Google DeepMind / Unsplash


