対話型AI「ChatGPT」を手がける米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は9月12日、今年中の株式上場(IPO)を行わない方針を明らかにしました。AI(人工知能)の安全性への懸念が高まるなか、「いま上場するのは賢明でない」と述べています。史上最大級と目されてきたIPOは、少なくとも2027年以降にずれ込む見通しです。
アルトマン氏「安全性を優先」
アルトマン氏は、AIの能力が急速に進歩していることを踏まえ、上場を急ぐより安全性の確保を優先すべきだとの考えを示しました。同氏は米誌の取材に対し、安全性に必要な対応を行うためであればIPOの延期はいとわないと語り、能力が新たな段階に達する際には開発の一時停止も社内で議論していると明かしています。
競合トップも「減速」で足並み
こうした動きは、AI業界全体の空気の変化を映しています。競合するAI企業アンソロピックのダリオ・アモデイCEOは、開発のペースを意図的に抑えるべきだとする論考を発表しました。アモデイ氏は、米国のAI開発の優位性や商業的な競争力を犠牲にすることなく開発速度を和らげる三段階の計画を提案しています。この提案には、イーロン・マスク氏とアルトマン氏がそろって賛意を示しました。普段は競い合う経営者たちが足並みをそろえた点は異例です。
背景には、AIをめぐる相次ぐ不安な出来事があります。制御を離れたAIエージェント(自律的に動くAIプログラム)の群れが、開発者向けサイトなどに不正侵入する事案が報告され、技術の暴走への警戒が強まっています。急成長を追い求めてきたAI業界が、いったん立ち止まって安全性を見つめ直す局面に入りつつあります。
投資家にとって、オープンAIの上場は待望の大型案件でした。上場が2027年以降に先送りされたことで、AI関連への投資マネーの流れにも影響が出る可能性があります。もっとも、安全性を重視する姿勢は、長期的にはAIへの社会的な信頼を高め、市場の持続的な成長につながるとの見方もあります。
日本への影響
オープンAIの上場延期は、日本の投資家やAI関連企業にとっても見逃せない動きです。ソフトバンクグループはオープンAIへの大型出資を進めており、上場時期の後ずれは同社の投資回収の見通しにも影響します。ソフトバンク株は米AI相場の動向に敏感に反応してきたため、投資家は関連ニュースに注意を払う必要があります。また、AIの開発ペースを抑える議論が広がれば、AI向け半導体やデータセンターへの投資が一服する場面も考えられ、東京エレクトロンやアドバンテストなど関連銘柄の株価にも波及します。一方で、安全性を重視する流れは、AIの信頼性や品質管理を担う分野に新たな事業機会を生む可能性があります。日本企業にとっては、単に海外のAIを追いかけるだけでなく、安全に使いこなす技術やルール作りで存在感を示す好機ととらえる視点が求められます。
まとめ:AI業界が「速さ」から「安全」へと軸足を移し始めた今、私たちも便利さと危うさの両面から技術と向き合ってみてはいかがでしょうか。
出典:
Fortune – Sam Altman: OpenAI won’t go public this year
CNBC – OpenAI rules out IPO this year as Altman, Musk & Amodei warn AI is moving too fast
Photo: Sơn Vũ / Unsplash


