クアルコム、AI半導体テンストレント買収を協議──最大100億ドル規模

スマートフォン向け半導体大手の米クアルコムが、AI(人工知能)チップの新興企業テンストレントの買収に向けて協議を進めていることが分かった。複数の報道によると、買収額は80億〜100億ドル(約1.2兆〜1.5兆円)規模に上る可能性があるという。

RISC-V陣営の先鋒を取り込む

ロイター通信などが6月16日に報じた。テンストレントは2016年に著名な半導体技術者ジム・ケラー氏が設立した企業で、オープンな命令セット規格「RISC-V(リスク・ファイブ)」を用いたAI向けチップを設計している。エヌビディアが圧倒的なシェアを握るAI半導体市場に、独自の省電力設計で挑む存在として注目されてきた。

クアルコムにとって、この買収はスマホ依存からの脱却とデータセンター・AI分野への本格参入を意味する。同社は近年、AIサーバー向け半導体の開発を強化しており、テンストレントの技術と人材を取り込むことで、急成長するAIインフラ市場での競争力を一気に高める狙いがあるとみられる。報道を受けてクアルコムの株価は一時4%超上昇した。

交渉は初期段階

ただし、交渉はまだ初期段階にある。クアルコム、テンストレントの両社とも「進行中の交渉についてはコメントしない」として正式な認否を避けており、最終合意に至る保証はない。買収額には業績連動型の支払いが含まれる可能性もあり、最終的な金額は変動しうる。

日本への影響

この動きは、日本の半導体業界にとっても示唆に富みます。テンストレントが採用するRISC-Vは、英アーム(ソフトバンクグループ傘下)が握る回路設計の主流規格に対抗する「無償で使えるオープン規格」として世界的に普及が進んでいます。クアルコムがRISC-V陣営を強化すれば、ソフトバンク傘下アームのライセンス事業と競合が一段と激しくなるおそれがあり、グループの収益戦略にも影響しうる構図です。

国内では、次世代半導体の量産を目指すラピダスや、車載半導体に強いルネサスエレクトロニクスがRISC-Vの活用を模索しています。AI半導体の設計をめぐる大型再編は、こうした日本勢の提携先選びや技術戦略にも波及する可能性があります。投資家にとっては、エヌビディア一強とされてきたAI半導体市場に競争の芽が生まれることが、関連銘柄の物色テーマを広げる材料となりそうです。日本の産業界としても、オープン規格をめぐる主導権争いの行方を注視する必要があります。

まとめ:AI半導体の覇権争いは新たな局面に入りつつあり、日本企業がどの陣営とどう手を組むのか、その戦略眼が問われているのではないでしょうか。


出典:
Yahoo Finance / Reuters – Qualcomm in talks to acquire Tenstorrent
The Register – Qualcomm circling Tenstorrent in $10B RISC-V play
GuruFocus – Qualcomm-Tenstorrent $8-10B talks

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