オーストラリアのモナシュ大学の研究チームが、光が運ぶ情報を1枚のチップ上で生成・制御・読み取りまで行える微小な回路を開発した。電子の代わりに光を使うことで、より高速で消費電力の少ない次世代コンピューターの実現に一歩近づく成果として注目を集めている。
光の「谷」を制御する新技術
このチップは、原子レベルの薄さの材料とナノスケールの構造を使い、光が持つ「バレー(谷)」と呼ばれる量子的な性質を制御する。これにより、従来とは異なる方法で情報を符号化できる。研究チームは、この成果が「バレートロニクス」と呼ばれる新しい研究分野の重要な節目になると説明している。
光を使う「フォトニクス(光技術)」コンピューティングは、近年世界中で研究が加速している。光は電気信号への変換を繰り返す必要がなく、原理的には光の速さで計算できるため、膨大な電力を消費する大規模AIの省エネ化につながると期待されている。シドニー大学なども、光の速さで計算する超小型のAIチップの試作に成功している。
残る量産化の課題
実用化には、性能を保ったまま大規模に量産する技術の確立など課題も多い。しかし、生成AIの普及でデータセンターの電力消費が世界的な問題となるなか、光技術は消費電力の壁を打ち破る有力な候補として、研究開発競争が激しさを増している。
日本への影響
光半導体の研究は、日本にとっても国家戦略の中核に位置づけられている。NTTは光信号のまま情報を処理する次世代基盤技術「IOWN(アイオン)」構想を掲げ、消費電力を大幅に削減した光電融合デバイスの実用化を進めている。国際的に光コンピューティングの競争が激化するなかで、こうした日本発の技術が世界標準を握れるかどうかが、将来の産業競争力を左右する。
AIデータセンターの電力消費は、日本のエネルギー政策にも重い課題を突きつけている。経済産業省はデータセンターの新増設に伴う電力需要の急増を見込んでおり、光技術による省エネ化が進めば、電力逼迫の緩和にもつながりうる。投資家にとっては、NTTや古河電気工業、レーザーテックといった光関連技術を持つ企業が、長期的なテーマ株として関心を集めやすい局面にあるといえます。
まとめ:光で動く半導体はまだ研究段階ですが、AI時代の電力問題を解く鍵として、日本企業の動向にも注目しておきたいところです。
出典:
ScienceDaily – New light-powered chip could accelerate AI and quantum computing
Photo: Syed kumail Haider / Unsplash


