AI開発大手のアンスロピック(Anthropic)が、独自のAI半導体を製造する協力先としてサムスン電子と協議に入ったと報じられた。米メディア「ジ・インフォメーション」が7月2日に伝えたもので、アンスロピックはサムスンの2ナノメートル(nm)製造プロセスと先端パッケージング技術を評価しているとされる。生成AI各社が計算基盤の内製化を競うなか、チャットAI「Claude(クロード)」を手がける同社も自前チップへと動き出した。
推論特化のアクセラレーターを検討か
報道によれば、アンスロピックの計画はまだ初期段階にあり、チップに何をさせるか、どの程度の性能を持たせるか、サーバーにどう組み込むかを検討している段階だ。狙いは、AIの「推論(学習済みモデルを使って回答を生成する処理)」に特化した独自アクセラレーターとみられる。推論は日々の利用で膨大な計算量を消費するため、専用チップでコストを下げられれば競争力に直結する。
オープンAIの内製化が刺激に
背景には、ライバルであるオープンAI(OpenAI)の動きがある。オープンAIは6月24日、ブロードコムと共同開発した推論チップ「ハラペーニョ(Jalapeño)」を発表し、初期テストで一般的なGPU(画像処理半導体)を使った推論に比べて約5割のコスト削減を示したと伝えられた。これがアンスロピックの内製化を後押ししたとみられている。同社は6月上旬、オープンAIの専用チーム出身のエンジニアを採用し、開発体制を固めつつある。
サムスンとの関係も見逃せない。サムスンは2026年5月、アンスロピックが実施した総額650億ドル規模の資金調達(シリーズH)に、SKハイニックスやマイクロンとともに戦略的なインフラ投資家として参加した。半導体の製造から資金供給までを含む結び付きが、今回の協議の土台になっている。もっとも、正式な契約に至るかは未定で、仕様が固まるまでには時間を要する見通しだ。
日本への影響
AIチップの内製化競争が広がる流れは、日本の半導体産業にとって商機と競争の両面を持ちます。独自チップの設計・製造には、東京エレクトロンやアドバンテスト、SCREENホールディングスといった製造装置・検査装置メーカーの技術が不可欠であり、AI各社の投資拡大は日本勢の受注機会を押し広げると見込まれます。先端パッケージングの分野でも、日本の材料メーカーが供給網の一角を担っています。
一方で、サムスンが2ナノ量産で存在感を高めれば、同じ最先端プロセスを追うラピダスなど日本の半導体戦略にとっては手強い競争相手となります。日本政府はラピダスを軸に2ナノ世代での巻き返しを図っていますが、顧客となるAI企業をどれだけ取り込めるかが成否を分けます。投資家としては、AIブームの恩恵が「派手なチップ設計会社」だけでなく、その裏方を支える日本の装置・材料メーカーにも及ぶという視点を持っておきたいところです。
まとめ:AIの主役がソフトからチップへと広がるいま、その恩恵を受ける日本の「縁の下の技術」にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
出典:
The Information – Anthropic in Talks With Samsung
Bloomberg – Anthropic in Talks With Samsung for Custom AI Chip
TechCrunch – Anthropic is discussing a new custom chip with Samsung
Photo: Brecht Corbeel / Unsplash


