米グーグルが、半導体大手マーベル・テクノロジーとのAI(人工知能)半導体分野での提携を拡大し、同社株を最大122億ドル分取得できる権利を得たことが分かりました。自社開発チップの供給網を広げ、これまで頼ってきたブロードコムへの依存を薄める狙いがあります。データセンター向け半導体の争奪戦が、新たな段階に入りました。
最大122億ドルの新株予約権
マーベルが8月19日に米証券取引委員会(SEC)へ提出した書類で明らかにしたところによると、グーグルはマーベル株を1株206.58ドルで最大5890万株購入できる新株予約権(ワラント)を取得しました。権利の行使は、2027年第3四半期から2033年にかけて達成する共同売上高(5億ドルごとの区切り)に連動する仕組みで、提携全体では最終的に1200億ドル規模の売上をもたらす可能性があるとされます。
TPUを支える「周辺シリコン」を囲い込み
今回の協業でマーベルが担うのは、AI推論用のアクセラレーター(処理を高速化する専用チップ)や、ストレージ制御、ネットワーク接続、メモリー関連の半導体など、グーグルの独自プロセッサー「TPU(テンサー・プロセッシング・ユニット)」を支える周辺のシリコンです。TPUそのものの設計は対象外ですが、その性能を引き出す土台部分を丸ごと囲い込む格好となります。
発表を受けてマーベル株は8%上昇し、この1年続く上昇基調をさらに強めました。グーグルが供給網の多様化を急ぐ背景には、大規模データセンターを運営する各社の間で、汎用品ではない特注(カスタム)半導体の需要が急拡大している事情があります。特定のサプライヤーに頼りきる構図から脱し、AI基盤の主導権を自ら握ろうとする動きが鮮明です。
日本への影響
グーグルとマーベルの提携は、日本の半導体産業にとっても見逃せない動きです。AI向けの特注半導体が普及すれば、その製造を担う台湾積体電路製造(TSMC)や、そこに製造装置や材料を供給する東京エレクトロン、信越化学工業、アドバンテストといった日本企業に恩恵が及ぶ可能性があります。また、AI半導体には大量の高帯域メモリー(HBM)が必要で、キオクシアやソニーグループなど日本勢にとっても事業機会が広がります。
一方で、巨大テック企業が自社開発と囲い込みを強める流れは、汎用半導体を手がける企業にとって競争環境の激化を意味します。日本の投資家としては、AIブームの恩恵が「エヌビディア一強」から周辺の半導体・部材企業へと広がりつつある構図を押さえておくことが、有望な投資先を見極めるうえで役立ちます。
まとめ:AI競争の主役は、完成したチップから、それを支える無数の部品へと広がっています。表舞台に立たない「裏方」にこそ、次の成長の芽が潜んでいます。
出典:
CNBC – Marvell’s stock pops on AI chip deal that lets Google buy up to $12.2 billion in shares
Futurum Group – Marvell Attaches Across Google’s TPU Stack
AI Magazine – What’s Behind Google’s US$12.2bn AI Chip Deal with Marvell?
Photo: Utsav Srestha / Unsplash


