AI半導体新興d-Matrix、推論チップ「Corsair」量産開始──エヌビディア超えを主張

テクノロジー

AI半導体市場で、エヌビディアの牙城に挑む新興企業が存在感を強めている。米d-Matrix(ディーマトリックス)は、AI推論に特化したアクセラレーター「Corsair(コルセア)」の本格量産に入り、優先顧客への出荷を開始した。同社は、GPU単体に比べて最大10倍高速で消費電力は5分の1に抑えられると主張している。

インメモリー設計で省電力を実現

推論(インファレンス)とは、学習済みのAIモデルが実際に質問への回答や文章生成を行う処理を指す。Corsairは、メモリーと演算回路を一体化した「インメモリーコンピューティング」という独自設計を採用し、データの移動に伴う電力消費とボトルネックを抑える点に特徴がある。製造は台湾積体電路製造(TSMC)とアルチップ・テクノロジーズが担い、TSMCの「N6」プロセスで生産される。

d-Matrixによれば、Corsairはエヌビディアの「Blackwell(ブラックウェル)」GPUと組み合わせた場合、単体のGPUと比べて推論を10倍速く、3倍安く、最大5倍の省電力で実行できるという。同社のチップは「2026 AIブレークスルー・アワード」のAIプロセッサー革新賞も受賞し、量産開始直後ながら高い評価を集めている。

エージェント型AIが需要を押し上げ

需要が急増している背景には、自律的に作業をこなす「エージェント型AI」の台頭がある。2025年末に注目を集めたClaude CodeやOpenClawといったツールが、従来のGPU中心のインフラが想定していた範囲を超える推論負荷を生み出した。d-Matrixはマイクロソフトの支援を受け、大手クラウド事業者や新興クラウド、最先端のAI研究機関から受注を確保しているとされる。

日本への影響

AI推論チップの選択肢が広がることは、日本の産業界にとっても見逃せない動きです。これまでAIインフラはエヌビディア製GPUへの依存度が極めて高く、価格高騰や供給不足が国内のデータセンター投資の足かせとなってきました。d-Matrixのような省電力型の選択肢が増えれば、ソフトバンクグループやさくらインターネットが進める国内AI基盤の構築において、電力コストと調達リスクの両面で恩恵が期待されます。

製造面では、Corsairの生産を担うTSMCのサプライチェーンに、ディスコや東京エレクトロンといった日本の半導体製造装置メーカーが深く関わっています。推論チップ市場の拡大は、こうした国内企業の受注機会を押し広げる可能性があります。電力消費を抑えるAIチップの普及は、データセンターの電力需要が急増するなかで、日本のエネルギー政策にとっても重要な意味を持つことになります。

まとめ:AI半導体の競争が学習から推論へと広がるいま、日本の私たちも一強体制の変化がもたらす商機とコスト構造の転換に注目しておきたいところではないでしょうか。


出典:
HPCwire – d-Matrix Corsair enters full production
d-Matrix – Corsair wins 2026 AI Breakthrough Award
CNBC – Nvidia challenger d-Matrix starts production, Microsoft backing

Photo: Steve A Johnson / Unsplash

タイトルとURLをコピーしました