ドイツのメルツ首相率いる連立政権は7月2日、所得税減税や年金制度改革を柱とする大規模な経済改革案を発表した。中低所得層を対象に年間約100億ユーロ(約1兆7000億円)の所得税負担を軽減する内容で、低迷が続くドイツ経済のてこ入れを狙う。減税は2027年1月から実施される見通しだ。
34項目の「再生と雇用のためのプログラム」
新たな改革パッケージは「再生と雇用のためのプログラム」と名付けられ、34項目の施策で構成される。中身は所得税減税に加え、年金制度の抜本改革、従業員の病気休暇に関する規則の厳格化、そして企業活動を圧迫してきた官僚主義の削減など、幅広い分野に及ぶ。
財源は高所得者向け付加税の見直し
減税の中心は、中低所得世帯の所得税負担の軽減だ。年間約100億ユーロ規模の税負担軽減を見込み、その財源は主に高所得者向けの付加税(連帯税)の見直しでまかなう方針だという。税率の枠組みでは、所得7万ユーロ未満に適用される最高税率42%は据え置く一方、25万ユーロ超で45%、28万ユーロ超で47%という高所得者向けの区分を設ける。
背景には、ドイツ経済の長期停滞がある。ユーロ圏最大の経済大国でありながら、製造業の不振や中国との競争激化、高いエネルギーコストに直面してきた。メルツ政権は家計の可処分所得を増やし、消費と雇用を刺激することで、連立政権の求心力を高める狙いもある。ただし、病気休暇の厳格化などをめぐっては労働組合の反発も予想され、実現には曲折も見込まれる。
日本への影響
ドイツの改革は、日本の輸出企業や投資家にとっても見過ごせない動きです。ドイツはEU経済の中核であり、同国の消費が上向けば、現地に生産・販売拠点を持つ日本の自動車・機械メーカーにとって追い風となる可能性があります。減税による内需の回復が進めば、欧州向け輸出の下支えにつながると期待されます。
同時に、この改革は日本自身の課題を映す鏡でもあります。ドイツもまた高齢化と製造業の競争力低下に直面し、年金改革と減税を同時に進めようとしています。財源を高所得者への課税でまかなう手法や、労働のあり方をめぐる議論は、社会保険料の負担増に悩む日本の政策論議にも示唆を与えます。欧州株や全世界株式に投資する日本の個人にとっても、ドイツの景気回復はポートフォリオの欧州部分を左右する要因となるため、今後の議会審議の行方を注視する姿勢が求められます。
まとめ:減税と改革で経済再生を目指すドイツの試みは、同じ課題を抱える日本にとっても学ぶべき点が多いのではないでしょうか。
出典:
AP News – Germany
Euronews – Germany’s Merz announces sweeping reforms
ABC News – Merz unveils sweeping reform push for Germany
Photo: Toru Wa / Unsplash


